初めての尋問、万全を期したい!
契約書のひな形が欲しいにゃー
そんな若手弁護士におすすめできる書籍を紹介します!
実務には書籍が必須
民事事件を受任したら、まずは事案に対応した本を入手する必要があります。
ケース毎に必要な知識を学習しなければなりません。それに、書籍に付いてくる書式やひな形を利用すれば起案の手間が大幅に省けます。
法令改正に応じて知識をアップデートする必要もあります。
そこで、この記事では現役弁護士が民事弁護の書籍をおすすめします!
初めての法廷も、紹介した本で準備をすればきっと大丈夫。
民事実務におすすめの書籍(各分野共通)
要件事実マニュアル
訴訟類型毎に要件事実を端的にまとめ、請求の趣旨や訴状の例を記載したマニュアル。著者は何かと有名な裁判官です。
参考文献や関連判例が非常に充実している点が特徴で、芋づる式に文献を調べられます。
法律構成の検討で辞書的に用いたり、書面に引用する文献を一覧できるため極めて便利。
刊行の経緯を語る著者インタビューも怖おもしろい。
安易に本にしてはいけないというルールがありましたから、私は掟破りをしただけなんですね。
弁護士ドットコムより
注意点
この本を毛嫌いする裁判官もいるので、裁判書面では本書を引用するのではなく、本書に記載されている文献を引用することをおすすめします。
実体法の分野別おすすめ書籍については「初めての法律相談前に読むべき書籍9冊」もご覧ください。
若手弁護士のための民事裁判実務の留意点
第一審~控訴審の流れに沿った弁護活動の解説本です。
民事訴訟における裁判所内部の動きを解説しつつ、弁護士がどのように動くべきかを教えてくれます。
裁判実務では、根拠条文の無いものも含め、運用による「作法」が大量に存在します。このような作法は実務家にとっては当たり前とされており、類書にも解説はありません。
先輩弁護士からこのような常識を学ぶ機会が少ない即独弁護士には、特におすすめです。
クロスレファレンス民事実務講義
「若手弁護士のための民事裁判実務の留意点」が主に裁判手続を扱うのに対し、
本書は受任から事件終了までの依頼者との関係を網羅しています。著者は、民弁教官の経験がある弁護士で、各段階でどのような点に着目し、注意すべきかを弁護士の視点から書かれています。
「クロスレファレンス」の題名通り、関連する記述間のリンクが張り巡らされています。
知りたいトピックを拾い読みできるから便利!
先輩弁護士の目を通した事件処理の思考がわかるでしょう。
民事尋問技術
原理原則から尋問技術を説き起こす、理論的かつ実務的な本です。
修習時に戻った気持ちで尋問の基礎を見直すことができます。
尋問事項を作るときに「これでよかったかな?」と不安な点があったり指針に迷ったりしたら本書に返って確認しています。尋問にそのまま持って行ける「異議事由リスト」も便利です。
加藤先生といえば、法廷で雷を落とされる実務家も多いイメージがありますが…
「尋問時に裁判官に介入させない、尋問の狙いに疑いを持たれないためには、日頃の弁護活動できちんとした書面を提出するなどの評判の積み重ねが大事」などと書いており、身が引き締まる思いがします。
もし本書が読みづらいと感じたら、中村真「民事尋問戦略」を先に読むとよいかもしれません。
注意点
尋問事項の具体例などは載っていません。
スキルの向上には、知識のインプット→具体的事例で適用→反省・学びのサイクルが必要です。本書で尋問の土台を身に着けたら、ご自分で事件にあてはめて応用する必要があります。
書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究[補訂版]
154種類の事件類型ごとに、和解条項例と作成上の留意点が記載されています。
お持ちでない方は、和解条項案を作成する機会が来たらぜひ購入しましょう。索引がなかったり、文例が古いなど使い勝手にやや難はありますが、若手の方がこれを踏まえずに作成した和解案は心許ない気がします。
注意点
入手困難。店頭では司法研修所の書店か霞ヶ関の法曹会館でしか売っていません。
地方勢はどうすればいいにゃー!
裏技があって、法曹会(出版部03-3581-3953)に電話すれば郵送で購入できます。
支払は郵便局の振込依頼票で行います。
契約書などの作成に使える本
契約書作成の実務と書式
600頁以上の大ボリュームで、各契約類型ごとに判例と条文の根拠を丁寧に解説し、書式も付いてくるフルコースの本です。契約実務を一冊選ぶならこれにします。
典型的な契約類型について理論をしっかり解説したうえで書式へ落とし込んでくれるので、「なぜこの条項を契約書に含める必要があるのか?」を納得できます。
依頼者に対しても、本書に基づき根拠を示した丁寧な説明をすれば信頼感を得られそうですにゃ
最新版では、債権法改正により契約書を改訂するべき箇所をグレーの網掛けで示してくれています。
独禁法や個人情報保護法といった契約関連法令についても簡潔に触れられています。
注意点
大ボリュームとは言え、これ一冊で個別事案に完全に対応できるわけではありません。
あくまで典型的な契約書の型といくつかの変更例を示すものです。本書を起点としてさらに深める必要があります。
実体法の分野別おすすめ書籍については「初めての法律相談前に読むべき書籍9冊」もご覧ください。
契約の法務
300頁超と比較的薄めの本。著者は元裁判官で、企業法務に携わっている方です。
各契約類型について、条文、判例、参考文献の該当箇所引用、ユニドロワ原則との比較、さらに立法府における議論をまとめて記述してくれているため、一つの論点についての重層的な理解が可能になります。
本書は判例に基づいた構成となっているため、判例法を文書化したものである改正民法の理解がスムーズにできます。
応用自在!内容証明作成のテクニック[改訂版]
内容証明の書式も一冊備えておくとよいでしょう。
即独やノキ弁では自分で作らねばなりませんし、事務員に作ってもらうという方も、一度は自分で作成し、提出する流れを経験しておいた方がよいのでは。
内容証明の文体は?構成は?など、作って見れば意外と分からない点があるものです。
本書は、内容証明の基本を解説したうえで、債権回収から家族法や労働法に至るまで様々な事例の文例と変更例を収録してあり、使いやすい本です。
まとめ
以上、民事事件の実務を行う若手弁護士が読むべきおすすめ本でした。
皆さんの実務の参考になれば幸いです。
コメント