
国選を受けるときの手続は?

接見って何を持って行けばいい?
この記事では、初めて刑事事件を受任する若手弁護士に向けて、こうした“最初の壁”を乗り越えるための実務で役立つ本を紹介していきます。
実務の流れや段取りがわかるもの
刑事弁護ビギナーズ ver2.1(季刊刑事弁護増刊)
おすすめ度★★★(定番中の定番。一冊だけ買うならこれ)
刑事弁護に必要な知識と視点がほぼ網羅された、若手弁護士の必携No.1書籍です。
初めて刑事事件を受任する前に一冊読むなら、絶対これ。
具体的な手続の流れ、豊富な書式、実務運用に関する情報も掲載。理論だけでなく実際の案件処理にも直接役に立ちます。たとえば、示談交渉の入り方について丁寧に解説されており、刑事弁護の実務経験がない方でも、流れや対応の仕方がイメージできるようになります。
私自身は修習中に買いましたが、その後も現在まで参照し続けています。
特にありがたかったのは、刑事手続の流れを弁護人の視点から俯瞰できること。刑事手続では、法律や規則に明記されていない実務上の慣行が多くありますが、そうした運用にも言及があます。
情状弁護アドバンス
おすすめ度★★★(誰にとっても必須とは言わないが、被疑者の更生に熱意のある方には、ぜひ)
受任することになる事件の多くは、自白事件です。
罪体を争う事案とは異なり、やるべき弁護活動が一義的に決まっていない。そのため、「何を、どう主張すればよいのか」途方に暮れる若手弁護士は少なくありません。手を抜く弁護人もいるといわれる情状弁護ですが、量刑に影響を与えるだけでなく、実は再犯の可能性を下げ、被疑者・被告人の人生そのものの方向を変え得る、大きなやりがいのある分野です。
本書『情状弁護アドバンス』は、刑弁ビギナーズの情状弁護の章を一冊に膨らませたような内容で、実践的かつ網羅的な情報が詰まっています。
環境調整や被害者対応をどう行うか、「反省」をどのように証拠化するかといった方針決定の土台を提供してくれるだけでなく、たとえば黙秘を維持しながら保釈を実現するために弁護人が自白調書を作成するなど、現実的な工夫にも踏み込んでいます。様々な局面を想定した書式も掲載されており、すぐに実務に活用できるのも魅力です。
巻末には、犯罪類型ごとの量刑傾向に関するデータも掲載されています。

量刑相場についてさらに深めたいときは、『量刑調査報告集V』ですね!
刑弁フォーラムにも量刑データベースがあります。
こんなときどうする 刑事弁護の知恵袋
おすすめ度★★(実務や手続面のつまづきを解決したい若手弁に)

初めての公判…どの書面を何通コピーして行けばいい?

執行猶予の場合、どのタイミングで、どこで釈放されるんだろ
といった、刑事弁護の実務で若手がぶつかりやすい「あるある」な疑問に答えてくれるのがこの一冊。「一回結審の公判廷での弁護人の典型的な動き方」といった、類書ではなかなかカバーされない手続面での素朴な疑問にも答えてくれます。
『刑事弁護ビギナーズ』を読んで、さらに「手続面・細かい実務についても用意したい」という方向けです。
事例に学ぶ刑事弁護入門: 弁護方針完結の思考と実務 (事例に学ぶシリーズ)
おすすめ度★★(どちらかといえば実体面に重きを置いて、事件処理の流れを実務家の観点から押さえたい方に)
刑弁教官の書かれた、捜査段階から公判まで、ケースセオリーに基づく弁護活動の進め方をさまざまな事例を通じて学べる一冊です。
起訴前 or 起訴後 × 自白事件 or 否認事件の4象限に分類された構成となっており、それぞれの典型事例を通して弁護活動の流れを具体的につかみながら、難易度の高い事件へとステップアップできるようになっています。
内容は、ベテランと新人弁護士の対話形式でストーリー仕立てに進行するため、読みやすく、手続きの流れが自然に頭に入ります。各事例には関連書式が添えられており、読んだ内容をそのまま実務に活かしやすいのもポイントです。
最新の実務に即したリアルな観点から重要ポイントが解説されています。
他方、少年事件を含め様々な事件に一冊で対応したいなら、「明日、相談を受けても大丈夫!刑事・少年事件の基本と実務」もいいでしょう。自白事件に焦点を当てて、少年、高齢者や障害者といった人的類型ごとに実践的知識をコンパクトに解説する、タイパ良本です。
初めての公判期日前に
実践!刑事弁護異議マニュアル
おすすめ度★★★(公判に持参)
尋問だけでなく、証拠調べや冒頭陳述など、異議を出す場面は意外と多いものです。
本書は92ページという薄さに、異議申立てに必要な知識をコンパクトにまとめています。
異議を言うときの基本動作、注意点、心構えまでが整理されており、初めて法廷に立つ前に確認しておきたい内容です。
異議は、それ自体が重要な武器です。
認められるかどうかにかかわらず、検察官が慎重になり、誘導尋問が減り、裁判官も尋問の裁定に敏感になります。
争点に入る前に何度か異議を出しておくことで、重要な局面でもためらわず声を上げやすくなります。
異議申立をためらいやすい理由が次のように整理されており、これらを意識しておくだけでも、法廷での緊張感は大きく変わってきます。
- 瞬時に判断して動かなければならないこと
- 法文の知識が不十分なこと
- 理由があっても、戦略上控えるべきか迷うこと
刑事裁判の法廷に臨む前に、一度は読んでおきたい本です。

公判には、巻末の「異議申立例文一覧シート」を切り取って持っていきましょう
実践!刑事証人尋問技術 — 事例から学ぶ尋問のダイヤモンドルール(DVD付)
おすすめ度★★★(証人尋問前に)
証人尋問って、最初はどこから手をつけたらいいかわからず途方にくれたものでした。
そんな折、刑弁に熱意のある先生に薦められて出会った本がこれでした。
英米法の法廷技術のゴールデンスタンダード「弁護のゴールデンルール」をベースに、日本の刑事法廷でも使いやすい「ダイヤモンドルール」として整理されています。
尋問の成功例と失敗例を並べており、読んでいるだけで「ああ、こういう失敗を自分もやりそうだな」と思ったのを覚えています。実務本なのに、読み物のようにサクサク読める点もポイントが高い。
専門家証人の尋問や反対尋問用のメモの取り方について解説している続刊『実践!刑事証人尋問技術Part2:事例から学ぶ尋問のダイヤモンドルール』も併せて読むと、尋問の組み立てを考える視座を持てるようになります。

「何となく考えるだけ」の尋問準備から、
「どう設計するか」を意識できるようになりました
早めに読んでおくと、法廷で立ち回る自信が違ってくると思います。
経験談や思考のヒントがもらえる読みもの
弁護のゴールデンルール
刑事弁護をまじめにやっている人なら、一度は読んでいる一冊でしょう。
無駄がなく、尋問と弁論の考え方が美しく整理されています。
- 事件の概要をつかんだら、すぐに最終弁論を書き始める
- 反対尋問では、相手を論破するのではなく、裁判官に勝ちを自然に認識させる
- 相手の主張を長々と確認したり、威圧する尋問は逆効果
こうした視点を、短い言葉で端的に示してくれます。
読むたびに違う発見がある本。尋問期日前には読み返し、ゴールデンルールの感覚を蘇らせておきましょう。
特別な類型の事案で役立つもの
「少年事件ビギナーズ ver2.1」は、少年事件特有の手続きや留意点を実務目線で整理した定番書です。ver2.1は2021年改正法に対応しています。
「外国人事件ビギナーズ ver.2」は、刑事だけでなく、難民認定、民事・家事、労働などのあらゆるケースにわたり、在留資格をはじめとした、外国人事件を扱う際に最低限必要となる知識や留意点についてまとめています。
裁判員裁判を受任する場合は、「公判前整理手続きを活かす Part2(実践編)」で、公判前整理手続に必要な証拠開示、予定主張、証拠制限について押さえておきましょう。


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