事務所の人間関係が辛くて…。もし独立したら、どんなデメリットがあるんだろう。
即独したら、就職組に差を付けられちゃうのかな。
そんな若手弁護士の方に向けて、独立のメリットとデメリットについて紹介します。
即独弁護士の数は減少傾向
ある弁護士会では、60期から63期までの即独割合は、
新人弁護士のうち合計で3%近くが即独
総務省pdf https://www.soumu.go.jp/main_content/000156955.pdf
だったそうです。
73期では、即独の割合は1.2%(前年比0.4%減)まで落ちています(弁護士ドットコムの調査による)
ボリュームゾーンの60期台がイソ弁を雇用し始めたことにより供給過剰が一段落し、就職難による「やむを得ない即独」が減ったと思われます。
即独・早期独立に伴うメリットやデメリットについて、現役弁護士が解説します。
早期独立のメリット
仕事量や内容が自由
もともと弁護士は融通が利く職業ですが、勤務弁護士やインハウスの場合は自由に休みを取れません。
独立弁護士は、いつ休むのも自由、どれだけ仕事をするのも自由。自分のペースで仕事ができるため、ワークライフバランスの調整が簡単です。
- 育児や介護に時間を割きたい
- 別の事業も同時並行したい
など、ライフステージに併せて業務量を調整できるのは独立の大きなメリットです。
ただし、サボり癖のある人は要注意。怠惰の対価はすべて自分に返ってきます。
また、担当する事件を基本的に選べない勤務弁護士と異なり、集中的に取り組みたい分野に好きなだけ打ち込むことができます。
人間関係のストレスがない
ボスの顔色をうかがう必要も、人の指示を受けて仕事するストレスもありません。
事務所内のパワハラや搾取といったブラックな働き方とは無縁です。
速く成長できる
独立すると、
- 何事も1人で決断しなければならない
- 仕事の出来が収入に直結する
という緊張感が生じるため、真剣に業務に取り組むことになるでしょう。
必要なサポートを求めて、一つ一つの事案に全力で取り組み、改善するサイクルを回せた場合は、急速に成長できると考えられます。
やりがいが大きい
すべての業務を自らの判断で行い、頑張れば頑張った分だけ収入が上がります。
成果が上がれば、大きなやりがいを感じられそう!
また、事務所経営の諸々を自分で管理することになります。
税務、会計、雇用、営業からインフラ整備まで様々な分野の知識が身につくため、経営者の悩みを深く理解し、共感できるようになるでしょう。
早期独立のデメリット
経営に労力が割かれる
事件処理以外の時間を割いて、経営事項を自分で管理せねばなりません。
事務所の備品整備に帳簿付け、会計、雇用管理…難しい。
このあたりのことが不慣れな方は、最初は苦労の連続です。会計ソフトを導入するなどして、徐々に業務体制を構築していきましょう。
営業も重要です。
継続的に依頼を受け、売上に繋げることは、事務所維持の生命線となるからです。
- 商工会議所や地元の消防団などで顔を売る
- ポータルサイトや自分のウェブサイトで集客する
といった工夫が必要です。
収入が不安定
仕事がなければ収入はゼロ。
依頼が少ない開業当初の数ヶ月間は無収入も十分あり得ます。
仕事の状況にかかわらず給料を保証されている勤務弁護士を、羨ましく感じることもあります。
病気や家族の事情で業務が行えないこともあるでしょうから、休業補償保険は検討した方がよいでしょう。
また、経費にも悩まされることになります。
事務員を雇わなくても月数十万円はかかります。
独立直後は、受任したいがためにスジの悪い案件を受けてしまうというよくある落とし穴があります。
【スジ悪事件を受けることによる不利益】
- 事件処理に労力がかかる
- 他の事件を処理する時間が圧迫される
- 収入状況がますます悪化する
さらに、このような案件では依頼者との関係に悩まされることもよくあります。
時間はあっても色々なことに余裕のない独立直後だからこそ、受任する案件は慎重に選ぶようにしましょう。
なお、開業費用は100万円~300万円が必要と一般に言われています。
相談相手へのアクセスの悪さ
即独した弁護士は、
自分の書面を出すことに恐怖やリスクを感じる
ことがよくあります。(日弁連資料より)
指導してくれる弁護士が事務所にいないことから、
- 起案をチェックしてもらう
- 案件の処理方針についてアドバイスをうける
という機会が失われ、自らの判断ですべての事件処理・起案を行わなければならないからです。
といった気軽な機会が無くなり、自らの判断ですべての事件処理・起案を行わなければならないからです。
自信の無い書面を自分の名前で出す…この重圧はかなりのものです。
先輩弁護士と良い関係を構築して、気軽に質問できる人を確保しておきましょう。
弁護士会によっては、早期独立した弁護士のためのチューター制度があるみたいですね!
また、弁護士実務は法律の知識さえあればできるわけではありません。新人にとっては毎日が分からないことの連続です。
【若手弁護士がとまどう些細な実務】
- 法廷での所作
- 依頼者への進捗報告
- 刑事事件被害者への手紙の書き方
勤務弁護士であれば兄弁姉弁に質問できますが、1人で事務所を経営する場合はちょっとした相談の機会がなくなります。
弁護士の「常識」は、若手弁護士向けのOJT本で補う必要があります。
こちらもご覧ください。
成長できないリスク
相談相手を確保できず、業務の進め方についてフィードバックを受けない状態が続けば、弁護士としての成長が遅くなることもあります。
独善的・ガラパゴス的な弁護士にならないよう、しっかり相談相手を確保することが非常に大切です。
そういえば、稀に、意味不明な書面を出してくる代理人がいますよね…。
また、経験できる事件種類が限られるというデメリットもあります。
特に都会の町弁であれば、離婚・相続・交通事故・債務整理などの個人の案件が多くなるでしょう。
企業法務の経験を積みたい気持ちがあるなら、勤務弁護士やインハウスの働き方を検討するべきです。企業法務をやりたいけれど、どうしても独立したい場合は、集客方法にかなりの工夫が必要だと思います。
まとめ・独立を考えている弁護士へ
様々な苦労はありますが、成長するための痛みのようなものです。
しっかり対策を行っていけば、独立して良かったと思える日がきっときます。
独立を考える皆さんにお伝えしたいことを最後に記します。
1 消極的な理由での即独はできるだけ避ける
早期独立や即独をしたい積極的理由があるのでなければ、しない方がいいです。
就職難が理由であったり、事務所の人間関係から逃げたいという消極的理由での早期独立はおすすめできません。
就職先が見つからなければ、友人やローの先輩、先生に頼ったり、転職エージェントに相談して客観的なアドバイスを求めましょう。
2 相談先の確保は必須
即独の場合、できれば修習時代から意識的に実務での動き方を吸収しましょう。
地方であれば事務官と親しくなっていろいろ聞けることもあるでしょう。
3 立地場所は慎重に検討する価値がある
管轄地域の人口と弁護士人数を調べましょう。
役所や商工会議所、隣接分野の士業の事務所に話を聞きに行くのもよいでしょう。
4 視野を広くもつ
独立するべきか迷いが生じたときは、人生の優先事項をもう一度見つめ直し、どのようなワークスタイルを目指すかを決めましょう。
【ワークスタイルの考え方】
- 自由な働き方が大事なのか
- 安定的な収入を確保したいのか
- 先輩の姿を間近に見て学びたいのか
- 自分に緊張感と負荷をかけて成長したいのか
そのうえで、独立以外の選択肢にも目を向けてみることです。
友人に相談したり、ひまわり求人情報の情報を見て、選択肢を広く探ってみましょう。法律事務所だけでなく官公庁や中小企業などさまざまな機会が広がっています。
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