
初めての当番弁護。必要な書類をチェックしたいにゃ
何事にも初めてはつきもの。でも、弁護士の仕事は人の権利に関わる責任重大な業務。初めてだからといって、手を抜くことは許されません。
とくに刑事弁護の初動である当番弁護や国選の初接見では、刑弁センターへの提出書類、接見で聴取するべき事項や差し入れが望ましい書類など、限られた時間でやるべきことが山ほどあります。
しかし、事前に「接見セット」を準備しておけば大丈夫。
必要書類一式をファイルにまとめて携えておけば、事務所に寄らずに接見に直行できるので、
空いた時間でもっと大事な業務に集中できます。
この記事では、弁護士である筆者が、
実際に使ってきた「接見・受任準備の持ち物リスト」を公開します。
1.スムーズな接見のために必要なもの
① バッジまたは身分証明書
接見受付で必ず見せます。
弁護士と証明できなければ普通接見となってしまうため。
② 職印(指印でも可)
差し入れのために必要。
2.受任手続のために必要なもの
③ 弁護人選任届(弁選) 【国選以外で受任する場合に使う】
国選以外で受任した場合、すなわち、純粋な私選の場合と、被疑者弁護援助制度を利用する場合には、検察または裁判所に受任の事実を知らせるための届出を行う必要があります。
接見後の提出先は次のとおり。
① 送検前は警察
② 送検後は検察庁
③ 起訴後は裁判所
①または②で弁選を提出していれば、重ねて③を提出する必要はありません。①または②の場合は、写しに受理印を押してもらい、控えとして保存します。以後の手続において、あなたが弁護人であることを証明するために使います。
なお、①の場合に警察が弁選の受領を拒むことが多々あるのは、ものの本で説明されている通りです。
④ 委任契約書 【私選受任する場合に使う】
私選で受任する場合に必要となります。被疑者・被告人と直接契約する場合は、差し入れをして署名指印してもらい、宅下げします。
親戚・友人など周囲の人間と契約する場合もあります。
⑤ 刑事被疑者弁護援助制度利用申込書 【被疑者に資力がなく勾留前に受任する場合に使う】
被疑者に資力がない場合であっても、勾留前は国選が使えません。私選で受任したうえで、日弁連の被疑者弁護援助制度を利用して弁護費用を賄うことができます。
申込書を差し入れて「申込者」欄に署名・指印をもらい、宅下げをします。他の欄を記入したうえで法テラス地方事務所()にFAXします。
この場合、勾留後に国選弁護人として選任してもらう切替手続も必要となるので忘れないように。この手続きを怠ると、別の人が選任されてしまいます。
⑥ 国選弁護人選任請求書・資力申告書 【委託援助を利用する場合に使う】
勾留後の国選切替のために必要な書類です。差し入れて署名・指印を受けて宅下げをしましょう。勾留決定後に、「国選弁護人の選任に関する要望書」とともに裁判所に提出します。
※2018年6月1日に全勾留事件が国選対象となったため、委託援助で受任した場合は、勾留決定後に必ず国選への切替手続が必要となりました。
⑦ 私選弁護人選任申出書・不受任通知書 【当番弁護で、私選受任をしない場合に使う】
当番弁護として出動後、私選としては受任しない場合に使います。すなわち、全く受任しない場合、および委託援助での受任はしないが勾留後に国選で受任する場合が含まれます。
二通用意しておき、一通を差し入れて、もう一通を(国選受任予定の場合はその旨を追記したうえで)刑事弁護センターに送ります。

国選で受任する予定なら、「国選弁護人の選任に関する要望書」を法テラスに提出するのも忘れにゃいように
当番弁護の配点通知とともに送られてきます。
以下からもダウンロード可。

警察にも用意されているので、留置係にもらうこともできます
3.被疑者・被告人のために必要なもの
⑧ 名刺
受任する場合は必ず差し入れます。
⑨ 書面「身体を拘束されている方に」
逮捕から裁判までのタイムライン、「公判」や「起訴・不起訴」などの概念の説明、取り調べを受けるにあたって注意するべきこと、供述調書の重大性などについて、わかりやすくまとめられた説明文です。
⑩ 権利告知書 【特に、外国人の場合】
各国の言葉で、弁護士であるあなたの役割、身体拘束の期間、在留資格との関係、黙秘権・通訳人を求める権利、供述調書などについて簡潔に説明する書面です。
特に、外国人である被疑者への初回接見に通訳人を同行できない場合に重要です。
⑪ 被疑者ノート

被疑者が取り調べの記録をとり、のちに違法性の主張などに使うためのノートです。被疑者が外国人の場合は対応する言語のものを持参しましょう。
⑫ 便箋・ノート
特に便箋は、謝罪文などのために一冊差し入れておくとよいでしょう。
⑬ 封筒、切手
接見に来られないときに被疑者からあなたに文書を送りたいときのために。
事務所住所が記載済みのものを差し入れると親切です。
4.あると役に立つもの
⑭ 六法
法定刑の確認などのために、デジタル版または携帯版六法を持っておきましょう。
⑮ パソコン
もちろん、接見で聴取した内容を記録するために、お忘れなく。

接見室にはコンセントがありませんから、充電を忘れずに!
充電切れ対策には、PC用モバイルバッテリーを持ち歩くのもおすすめです
このリストを一度整えておけば、次回以降も応用可能です。
行ってから焦るのではなく、“行く前に準備しておく”。それだけで全体の流れがぐっと楽になります!
まとめ
初めての刑事弁護、特に当番弁護の出動は、誰でも不安になります。
でも、必要な書類や持ち物をあらかじめリストアップしておけば、その不安の8割は解消されると言っても過言ではありません。
そして、たとえその場でわからないことがあっても、
「今はわからないので、調べて後ほど対応します」
と冷静に伝えれば、恥ずかしいことではなく、プロフェッショナルとしての対応です。
本記事の持ち物リストは、あなたが刑事弁護を始めるときに何をすればいいかを明確にし、
「自信を持って接見に向かう」ための土台になります。
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※受任手続についてはこちらの記事を参考に:作成中
※接見で聴取するべきこと、話すべきことについてはこちらの記事へ:作成中
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