
ChatGPT、気になるけど…弁護士の仕事に使って大丈夫なのかな?

みんな使い始めてるって聞くけど、どこから手をつければいいのやら

便利そうだけど、情報漏えいとかリスクもありそうで不安…
最近、若手~中堅の弁護士とのあいだで、こうした会話をよくします。
生成AIが話題になっているとはいえ、業務での活用となると、なかなか一歩が踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな方に向けて、弁護士実務で生成AIを使っている筆者が、
「どんな業務に使えるのか」
「使うときに最低限気をつけるべきこと」をわかりやすくまとめました!
読み終える頃には、「これなら自分も使ってみよう」と思っていただけるはずです。
生成AI、実際の使いドコロ
「実際、生成AIって何に使えるの?」
そんな疑問にお答えすべく、ここでは若手弁護士の実務において“今すぐ”使える具体例を紹介していきます。
事実関係をサクッと整理
- 論点や事実関係の整理・要約
大規模言語モデルは自然言語処理が得意とされており、具体的には文書要約や論点の抽出といったタスクに優れています。たとえば、長大な資料やヒアリングメモを「この内容を時系列で並べて」と指示するだけで、整理された情報が一気に出てきます。
表やマインドマップ形式での出力も可能なので、好みのスタイルに合わせて整理できるのもポイントです。 - メッセージや日記などの矛盾点チェック
相手方の主張内容、陳述書、証拠などをAIに読み込ませて、「矛盾する点は?」と聞くと、人間が見落としがちな綻びを指摘してくれることがあります。
ゼロから書かない!起案はAIにたたき台を依頼
- 訴状・契約書等のドラフト作成
白紙のワードファイルを前にして書き出せないあの瞬間…
AIにたたき台を作らせてから手を加えることで、起案の憂鬱さがぐっと軽減されます。

気が楽になるので、スピードも圧倒的に上がります!
- 陳述書から主尋問事項案を作成
たとえば、「クローズドクエスチョンと、オープンクエスチョンをバランスよく織り交ぜて」と指示すると、読みやすく自然な流れの尋問項目案が出てきます。
生成AIの能力を最大限に引き出すには、「聞き方」が大切。
たとえば、「ステップバイステップで考えて」と入力するだけで、出力の精度が上がることが分かっています。
こうした技法は「プロンプト・エンジニアリング」と呼ばれ、「法律事務所のためのChatGPT利活用ガイドブック」第4章で詳しく解説されています。
交渉・尋問の練習相手に!AIとロープレ
- 反対尋問の練習
AIを相手方に見立てて、こちらの陳述書に対する突っ込みをさせることで、自分の主張の穴をあぶりだす訓練になります。 - 交渉のポイント整理・着地点の探求
交渉における考慮要素をブレストさせたり、BATNAを探るといった使い方も。
相手に合わせたコミュニケーションのサポート
- メールを丁寧に
要点だけラフに書いたあと、「ビジネスメールとして丁寧な表現にして」と頼めば、伝わる・失礼のない文章に整えてくれます。
相手に応じて、柔らかい、または受け入れやすい言い回しに調整してもらうことも可能。
議事録作成や事務処理もおまかせ
- 打ち合わせメモの要点整理
依頼者との打ち合わせ後に、メモの内容を業務日誌のフォーマットに合わせて要約・整理できます。 - 議事録作成にはPLAUD AIが便利
PLAUD AIは認識精度が高く、話者の切り分け、要約、マインドマップ化まで自動でこなしてくれる点で、他のツールより一歩リード。単語登録ができる点も実務向きです。
他の候補としては、OpenAIのWhisper(精度は高いが導入が複雑、セキュリティ面に不安)、Adobe Premiere Pro(法務用途では物足りないか)などがあります。
なお、ChatGPTは、現時点では長文起こしには向きません。
事務作業をもっとラクに
- 会議日程調整もAIにおまかせ
Google社の生成AI「Gemini」は、Googleカレンダーと連携が可能。
例えば、「来週の空き日を3つ出して、依頼者宛の日程調整メールの文案を作って。カレンダーで仮予定を押さえておいて。」といった使い方ができます。
※ この機能を使うには、Geminiの学習モードをオンにする必要があります。
※ mcpサーバを利用すれば、Gemini以外のAIでも同様の連携が可能なようです(参考:https://haniwaman.com/note/n-22953/)。 - データの自動取得・集計も可能
- Googleカレンダーから勤務時間を自動集計
- Gmailから購入履歴を抽出して経費一覧表を作成
もはや、事務員の一部をAIが担う感覚です。 - 書式や各種文案の作成
ChatGPTに頼めば、依頼者向けの見積書・請求書から、法テラス用の申込書・報告書まで、決まったフォーマットに沿って効率よく作成できます。

もっと「本当にやるべき、価値の高い仕事」に集中できます
学びにも使える!生成AIでインプット→アウトプットを回そう
- 判例やガイドラインの要約
特にClaudeは読解力に定評があり、判例の事実関係を整理したり、ガイドラインの骨子を掴む際に役立ちます。 - NotebookLMで「AIと一緒に」独学
NotebookLMに資料を読み込ませて、チャットで
「この資料の内容について質問して」→回答を入力→フィードバックを求める、という使い方で、AIを学習パートナーにできます。 - マインドマップへの転用も簡単!
「この情報をマインドマップ形式で出して」と指示するだけで、視覚的に整理されたアウトラインが得られるのもAIの強みです。
使う前に、ここだけはチェック!
生成AIはとても便利ですが、弁護士業務で使うには注意すべき点があります。
ここでは、「これだけは最初に知っておいてほしい」最低限の注意点3つをおさえておきましょう。
① 個人情報は入力しないのが原則
ChatGPTなどに個人情報を入力することは、「個人情報の利用」にあたり、本人への通知や利用目的の公表が必要になる可能性があります。
依頼者の氏名や連絡先、事件番号などの個人を特定できる情報は抽象化・匿名化などを施し、入力しないようにしましょう。
② 「学習設定」はオフにする
Web版ChatGPTは、2025年4月現在、初期設定で、あなたが入力した情報がAIの学習に使われるようになっています。
これを防ぐには、「設定」アイコンから「データコントロール」>「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにしてください。

なお、API版は、現時点では初めから学習に使われない設定となっています。
③ NDAや守秘義務違反に注意
弁護士は守秘義務(弁護士法23条、職務基本規程23条)を負い、重ねて秘密保持契約を結んでいることもあります。
生成AIを使う際は、守秘義務の対象となる具体的な案件情報については必ず抽象化 or 匿名化して使うのが基本です。
🔍参考:「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(個人情報保護委員会 2023年5月23日)

今回は触れませんでしたが、入力・出力内容の著作権侵害リスクにも気を配りましょうね
「AIがやってくれる」ではなく、「AIにやらせる」時代
最近では、企業が契約書の一次チェックをAIに任せてから弁護士に「ダブルチェック」を依頼する流れも出てきているようです。
このようなケースでは、弁護士がAIが指摘した事項を見逃したり、同じ内容しか指摘できないようでは付加価値を提供できているとはいえません。AIに負けず、AIを利用してさらに付加価値を提供するためにはAIのハルシネーションを指摘したり、AIにはできない次のような価値提供ができます。
- 「この条項、将来的にどんなリスクになる?」と読める力
- 「この事件は、ビジネス全体としての損得はどうだろう?」とバランスを見抜く力
- 「この依頼者にとって最適な落としどころは?」と提案できる力
これらは、AIがいくら進化しても真似できません。
だからこそ、AIを正しく、うまく使いこなす弁護士が選ばれていくでしょう。
まとめ:まずは「これなら試せる」から始めよう
生成AIを活用すれば、若手弁護士でも業務効率やアウトプットの質を短期間で引き上げることができます。
新しい技術を「ちょっと怖いな」と思うのは自然なこと。
でも、リスクをしっかり理解して、まずは今回紹介したような安全で軽めな使い方から、少しずつ試してみてください。
📌今後も、生成AIについて取り扱う予定です!
ぜひシリーズでチェックしていただけたら嬉しいです。
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