事件相談が来なくて暇…
国選と被疑者弁護援助って別なの?色々な名簿があってわかりにくい!
「経験を積もう」「専門を磨くべし」とよく言われます。
でも、事件を受任しなければ経験しようがありません。ボスが事件をふってくれるイソ弁ならまだしも、即独やノキ弁は、経験の蓄積それ自体に苦労しているのではないでしょうか。
そんな方に向けて、若手弁護士でも登録できて、受任につながるおすすめの制度や名簿をまとめました。
民事法律扶助の法律相談担当
法テラスと民事法律扶助業務の契約をすれば、指定相談場所での法律相談を担当することができます。
民事法律扶助とは
総合法律支援法に基づく制度で、相談者に資力がない場合に無料法律相談や弁護士費用の立て替えを受けられます。法テラス(日本司法支援センター)が運用しています。
援助の内容は、①代理援助、②書類作成援助、③法律相談援助、④付帯援助の4つに分類されます。
法律相談日程(②法律相談援助)を担当すれば、事件受任(①代理援助)や、その場での簡易な書類作成(②書類作成援助)につながる可能性があります。
民事法律扶助の法律相談担当者になるには
✔ 誰が登録できる?
- 法テラスと契約している弁護士
前もって法テラスとの間で契約を結ぶ必要があります。
詳しくは法テラスが配布している「民事法律扶助業務の解説」をお読みください。
LAC(日弁連リーガルアクセスセンター)
LAC名簿に登録すると、保険加入者の交通事故などの事件を紹介してくれます。
LACとは
保険会社が販売する「弁護士費用保険(権利保護保険)」を運営するために、日弁連が2000年に発足させた機関です。
日本の主要な保険会社ほぼ全てが日弁連と協定を結び、LACから弁護士の紹介を受けています。
LACは「ラック」と読むらしいです
どのような事件の紹介を受けられる?
基本的には交通事故です。
LACに登録するなら、交通事故事件の事件処理の流れを勉強しておきましょう。
稀に、傷害・窃盗などの被害事件の紹介を受けることもあります。
案件数は、東京では1年に1~数件程度。地方ではもっと多数の紹介を受けられると聞いています。
報酬はタイムチャージ制も選択できます。LAC経由の案件の大半は訴額10万未満の少額案件と言われています。事案に応じてタイムチャージを選択するのを忘れないよう!
LACに登録するには
✔ 誰が登録できる?
- 単位会が開催するLAC名簿登録希望者研修会を受けた弁護士
弁護士の紹介手続は各単位会に委ねられていますので、問い合わせてみてください。
東弁の場合は、研修受講が登録要件となっています。
後見人等候補者名簿
後見人候補者として弁護士会が推薦する名簿に登録しておくと、専門職後見人として選任されることがあります。
後見人等候補者名簿の運用は単位会によって異なります。
この記事では東京を例にとって説明しますね。
後見人等候補者名簿に登録するには
後見人等候補者名簿は、紛争性がある案件や後見人等候補者がいない場合に備えて各弁護士会が作成し、家庭裁判所に提出されます。
一年に一回、名簿登録希望の照会がありますので、そのタイミングで希望を申し出ればOKです。
✔ 誰が登録できる?(東京の場合)
- 弁護士賠償責任保険に加入している
- 弁護士経験3年以上
- 名簿登録要件の指定研修に3回以上参加している
後見業務の現状
専門職後見人の割合は全国平均で80%を超えてきており、急速に伸びつつあります。(最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況―令和2年1月~12月―」より)
高齢者人数の増加と相まって、今後も選任件数の伸びが期待されます。
他方、報酬については、平均月額1~2万円と多くはないかもしれません。しかし、固定収入の見込みは開業直後は特に嬉しいものです。
後見人業務には、本人の意思をどのように尊重し、家族や周囲の思惑とどのように折り合いをつけるかなど、通常の法律事務とはひと味違う面白さがあります。人間に興味がある方には特におすすめします。
後見の実務書を一冊選ぶなら、申立から事件終了~相続人への引き継ぎまで網羅しており、書式も付いている次の本をおすすめします。
【関連Webサイト】
- 東弁LIBRA「成年後見実務の運用と諸問題」
国選弁護人・国選付添人名簿
候補者名簿に登録すれば、予め指定された担当日に国選事件の弁護人として選任されます。
国選弁護人等の名簿に登録するには
名簿の種類や登録要件は単位会によって異なりますが、基本的には、所定の研修の受講と基本契約を締結することの2点です。
東京では、被疑者、被告人、裁判員裁判事件、即決裁判、重大事件、控訴・上告審、少年事件、障害者事件などに分かれているんだニャ
契約締結は、法テラス地方事務所に契約申込書と弁護士会員登録証明書を提出して行います。東京の場合は、新人研修の際にガイダンスがありました。
担当日には弁護士会で事件を選び、続いて裁判所刑事部へ行き国選弁護人として選任を受けます(東京では第14部)。
どのような流れで選任を受けるか、どのタイミングでどこにどの書類を提出するかなど、煩雑な実務的知識が必要になります。
窓口でおろおろしないように、基本の実務書は読んでおきましょう。
【関連Webサイト】
- 法テラス「国選弁護人・国選付添人」:国選事件で用いる最新の書式が入手できます。
当番弁護士名簿
国選弁護人名簿と併せて、当番弁護士名簿にも登録しておきましょう。
当番出動自体は1度きりのものですが、引き続いて受任につながる可能性が高いです。(単位会によっては、受忍義務がある場合もあります)
担当日にはセンターから出動要請の連絡を受けます。何時に連絡が来るか分かりませんので、日程連絡が来たら、何時でも対応できるようその日のスケジュールはなるべく一日中空けておきましょう。
被疑者に資力がない場合は、勾留前は日弁連の被疑者弁護援助制度を利用し、勾留後は国選事件に切り替えます。資力がある被疑者の場合は私撰事件として受任できます。
まとめ
以上が若手弁護士におすすめの受任につながる名簿でした。
初めての事件類型では苦労するものですが、経験を積むためにもぜひ登録しておきましょう。
この記事が若手弁護士の業務の役に立てば幸いです。
コメント