ボス弁のあたりがキツい。これってパワハラ?
理不尽な目に遭って病みそうだにゃー
現在、少なからぬブラック法律事務所が存在します。
無理な環境で働き続けていたら心身を壊し、些細なストレスにも弱くなってしまいます。
そうなる前に脱出することが肝心。ですが、最初に入った事務所がブラックだった場合、自分への扱いが不当なのか正当なのか分からなくなることがあります。新人には業界の「普通」がわかりませんし、弁護士としても未熟だと自覚しているため、正当な指導なのではないかと考えてしまうからです。
これを書いている筆者自身ブラック事務所に就職したことがあるので、その気持ちはよーく分かります。
どのような事務所がブラックなのかを理解できれば、失った自信を回復し、前向きになって、転職など次の展開に向けて踏み出すことができます。
今回の記事ではブラック事務所の特徴を具体的ケースとともに紹介し、就活でそれを見抜く方法をお伝えします。万一入ってしまった方へのメッセージも載せました。
ブラック事務所のパターン
ボス弁が理不尽・異常性格
人的ブラックのケース。
- 日常的に怒鳴る、暴力をふるうとか
- 胸ぐらをつかみ「うそつきやろうが」などと大声を出しながらロッカーにたたきつけるとか(出典)
- 事務員にキスをしたり性的な行為を行ったとか(懲戒例多数)
- 至近距離からハサミを投げつけられたとか(本職実話)
- 事務所の女性と交際したら露骨に嫌がらせをされるようになったとか
文春新書「ブラック企業」にも法律事務所の記述があります。
相談室のドアを閉めていたところ、「外から相談の様子が見えないと、何が起こるかわからない。非常識だ」(おそらく、開けていても同じことを言われるだろう)と激しく叱責されたり、できるはずのない高度な訴状の作成をいきなり命じられる。そして、昼休みにも高度な法律の問題で質問攻めにして追い込む。ある女性弁護士は、見るからに痩せ衰えて、「自分は仕事ができない人間だ」というようになり、性格まで変わってしまったという。
今野晴貴 著「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」
ボス弁の家族が問題となるケースも。ボス弁の妻が用もなく頻繁に事務所を訪れて、イソ弁の服装や容姿など、業務と全く関係ない点に口を出されることもあるとか。
検察庁でも、机を叩いて叱責された検事が自殺したとのニュースがありました。
法曹界には良くも悪くもクセのある方が多いのは事実です。昭和~平成初期の弁護士には特に個性の強い人が多い印象があります。
良い大学に入れば普通に就職するだけで一生安泰と言われた時代ですから、それでも合格率数パーセントの司法試験に挑むというのは、野心家か、理想家か、あるいは組織でやっていけないという自覚がある人でしょう。
チームワークを経験せず個人事務所でストレスの高い業務を長年行えば、ますます角が尖るのも無理はありません。
もちろん、年配の弁護士にも尊敬できる立派な方はたくさんいらっしゃいます!
この記述は、ごく一部の弁護士について注意喚起するものです。
個人事務所歴が長い年配の弁護士に対しては、「どんな個性を持っているんだろう」と観察する気持ちで臨むとよいかもしれません。
業務内容が危ない
事件処理がブラックのケース。
- 暴力団の民事事件が多い(刑事ではなく)
- 明らかに違法な処理に携わっている
- 顧客への請求金額が高すぎて、トラブルが絶えない
など様々です。
裏社会の住人は弁護士費用を現金で払おうとすることがあります。こういった支払の税金処理をきちんと行わないと、弱みを握られて力関係が逆転することもあります。
またこのような事務所に長年在籍しても、弁護士として独り立ちするために必要なスキルが身につきません。
入所した事務所で妙な事件処理を行っていると分かったら早急に離脱しましょう。
勤務条件が劣悪
長時間労働・薄給など、搾取型ブラックのケース。
採用時に妙な契約を結ばされる事務所もあるようです。出典とともに以下引用しましたが、真偽の程は不明です。
仕事の有無や業績とは一切関係なく、「P事務所は所属弁護士に毎月12万円を一方的に貸し付ける」、「無利息だが返済条件はボス弁が勝手に決める」
毎月12万円を貸し付けるわ、事務所の赤字が出れば「貸付」という名の「供出」を強要するわ、これは「カタギ」のすることではない。
https://www.rokusaisha.com/wp/?p=6982
企業法務系では、名の通った事務所でも若手のうちはいわゆる9時~5時勤務(朝の5時)も多いです。
昼夜問わず業務用携帯が鳴るから、心がまったく安まらないにゃあ
厳しい環境下でこそやる気が出るというタイプもいますが、メンタルを挫かれるリスクの高い働き方であることは間違いありません。
自分の市場価値を理解し、「別の働き方もできる」「いつでも逃げることはできる」と知っているだけでも心の安定につながります。ご自分の適性をよく判断して、少しでも厳しいと感じたら他の事務所に目を向けてみましょう。
ブラック事務所のシグナル
ブラック事務所は一見してそれとわからないものですが、よく観察すれば特徴的な兆候があります。
職場の雰囲気が悪い
事務所の雰囲気の悪さは、パワハラ系事務所を判別する大きなシグナルです。
ボス弁が威圧的だと、若手メンバーが萎縮しています。
また、パートナー間の仲の悪さも雰囲気に表れます。
新人が居着かない
ブラック事務所には弁護士や事務員が居着きません。
イソ弁が数年在籍して独立するというのは普通のことです。しかし、1年未満で辞める弁護士が多い場合はちょっと注意が必要かもしれません。
ただ、過去の弁護士の在籍期間は情報が得にくいかもしれません。
関係が悪化して離籍した場合は過去の事務所名を公表しない方が多く、事務所名で検索しても出てこないからです。私も、辛い思いをした以前の事務所名はあまり公にはしません。
短期離職者の多さは口コミで情報収集するのがよいでしょう。
実際、「新人が居着かないことで有名な事務所」と考えると、いくつか思い当たります
逆に、円満に離職した弁護士とは関係が保たれるものです。
離席した弁護士が現在も事務所と関係を保っている場合(たとえば事務所と共同でセミナーを開くなど)は、ブラックではない可能性が高いといえるでしょう。
常に求人広告を出している
求人広告が常時出ている事務所にはちょっと注意が必要です。
いつも人が足りないということは、新人を雇ってもすぐに辞められてしまう事務所内の実態を反映している可能性が高いからです。就職したら自分も短期間で辞めてしまうかも?
著名弁護士の事務所でもブラックの噂はあるよ。
求人情報は定期的にチェックしてみてね。
ブラック事務所を回避する方法
紹介を受けて就職する(最善の方法)
近年パワハラ事務所が増えたと言われますが、公募を通じた就職の増加が一因と思われます。
旧司時代には知人からの紹介が典型的な就活スタイルでした。紹介でなくても、弁護士数が少なければ悪評判が広まりやすいため、先輩の助言によりブラック事務所を避けることができたようです。
しかし、最近はブラック事務所と知らずに入所してしまう不幸が増えています。
思い出してください。司法試験合格までに数多くの法曹と出会ったはずです。
- ロースクールの実務家教員
- 実務家の知り合いがいそうなゼミの教授
- サークルなどの先輩
- 先に合格した同級生
- 修習担当
遠慮は要りません。あらゆる伝手を辿って紹介を受けましょう。
事務所訪問で若手や事務員の態度をよく観察する
興味のある事務所があったら積極的に訪問を申し込みます。
紹介者がいれば応じてくれる可能性が格段にアップします。(常識的なアプローチ方法は日弁連ページを参考に)
たくさんの事務所を見学することで、
この張り詰めた雰囲気はなんかヤバそうにゃ…
などと、なんとなく気づけるようになってきます。
事務所訪問は自分アピールに終始するのではなく相手を見定める場でもあります。小さな事務所では相性が大事だからです。
こちらも、自然体でどのような雰囲気の方なのかを知りたいです
事務所名を出して評判を聞く
あらゆる法曹関係の知人に聞きまくりましょう。
事務所の評判を聞く際は、「事務所名を出して」質問することが肝心です。「ブラックな事務所を教えてください」と聞かれると、非常に評判の悪いごく少数の事務所名しか思い出せません。
東京などの大規模単位会では、他の事務所の情報は知らないことも多いです
事務所名を出して聞かれたら、相手方弁護士の事務所名、友人の就職先や修習先など、これまでに出会った無数の事務所の記憶を検索できるので、なんらかの情報が出てくる可能性が高まります。
修習中だけですが、裁判所に聞くのも手です。事務所には特に事件の多い係属部を聞いておき、その部の書記官や裁判官に聞きましょう。
勤務条件の書面化を求める
採用決定となっても、勤務条件があいまいだったり、「まぁ良いようにしてあげます」などと言って詳細を説明してくれない場合があります。この傾向は年配の弁護士に顕著です。
少なくとも以下の情報ははっきりさせるよう求めましょう。
- 雇用契約か業務委託契約か
- 個人事件受任の可否、可の場合は負担金の有無
- 給与・賞与・報酬の金額または算定基準
- 弁護士会費の負担
書面での合意がベストですが、それができないとしてもメールなどの残る形で情報をもらいましょう。
たくさんの求人情報に日頃から接しておく
様々な法律事務所の面接を受けたり訪問することで、どのようなボス弁や事務所が「ヤバそう」か、肌感覚で分かるようになります。
また、不利益な契約内容に気づきやすくなります。特に新人は、おかしな条件を示されても「これが弁護士の働き方というものか」などと納得してしまいがち。日頃から多くの求人情報に接して、求人市場の「相場」感覚を磨いておけば、妙な条件にすぐに気がつくことができます。
求人情報はひまわりで見れますが案件数は限られています。転職エージェントに登録しておくと、さらに多くの情報(非公開求人を含む)をメールで流してくれます。
今ブラック事務所で辛い思いをしている新人弁護士に伝えたいこと
能力不足はブラックを正当化しない
自分ができないから…
とか、
指導だから…
と考えてしまいがちですが、それは違います。
この考え方が通るなら、目的が手段を正当化することになってしまいます。
心は回復困難、早期脱出を
優しい人ほど
自分が辞めたら依頼者に迷惑がかかる…
などと考え、ずるずると在職を続けてしまったりします。
ですが、あなたの心の健康以上に優先するべきことなどありません。
抱えている案件は大事に思えるかもしれませんが、他の弁護士でも処理できます。
一方、あなたの心の健康は、一度損なわれてしまうと、元に戻るまで長い時間が必要になります。
私自身、理不尽なボス弁のもとで休職した経験があります。耐えることのできるストレスの閾値が低くなり、以前の心の強さは永遠に失われてしまったとすら感じます。
そうなる前に一刻も早く脱出することが肝心です。それ以上に重要なことなどありません。
他の道を探るチャンスと捉え、立ち止まって考えてみよう
むしろ、これは働き方についてじっくり考える良いチャンスかもしれません。
何といっても、最難関資格の弁護士になれたのです。恐れるものはありません。
これまでの司法試験の最年長合格者は71歳。
毎年、60台後半の方が司法試験に合格しています。
まだ若いあなたは今からまったく新しい業界に飛び込んでもよい。何だってできるのです。
- 今の事務所に居続けて、幸せな未来はあるのか
- 自分が本当にやりたかったことはなにか
- このまま年を取って後悔しないか
休みを取って、じっくり考えてみるのもよいでしょう。今が変わるチャンスかもしれません。
今の働き方を変えたいなら今動こう
いつか事務所を変えたいなら、こちらの記事も参考になると思うので読んでみてください。
「いつか」ではなく、「今」動くことで、今後の人生が変わります。
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